2014年11月24日月曜日

【これからのことを考える】児童福祉法を外れた、「すくすくスクール学童クラブ事業」の行く末は?

10月28日の江戸川区議会本会議で、学童クラブを内包した全児童対策事業である「すくすく」事業条例が可決され、あわせて「児童福祉法に基づく学童クラブ条例」が、廃止されました。

その3日前、10/25(金)、江戸川区・教育委員会・教育推進課からの、「すくすくスクール学童クラブでは、就労支援を、現在も、そしてこれからも行わない」との、公式回答をご紹介いたしました。

しかし、本会議直前の10/28(火)の午前になって、江戸川区は急きょこれを撤回しました。そして「学童クラブ事業は、現在も、これからも、その趣旨に就労支援を含む」ということを正式回答としたのです。

◆やっぱり「就労支援」にしておく。でも中身は…?

今回の「やっぱり就労支援です」という宣言は、江戸川区が、「小学生を持つ就労家庭に対し、公的な就労支援を行う」と宣言したことであり、江戸川区民のわたしたちにとって、ひとつの朗報であることは間違いありません。

しかし、同時に、疑問と懸念も生じます。

これまで、すくすくスクール学童クラブで、就労支援の機能を次々と消滅させていき、「これでは就労が成り立たない!」と苦情を申し立てる区民に対して、江戸川区・教育推進課は、「すくすくスクール学童クラブは就労支援ではないから」と説明し、近所に住む祖父母を頼りなさい、ファミリーサポートを利用しなさい(ファミサポ制度は就労支援としては不十分)など、他の就労支援を探すよう促していたのですから。

つまり、現行のすくすくスクール学童クラブの内容が、就労支援としては、自他ともに認めるほど、不十分な内容であるということです。

学童クラブ事業が児童福祉法の下にある、現在でさえ不十分であるのに、来年4月から新しい「すくすく事業条例」が施行されると、学童クラブ事業が児童福祉法を外れ、江戸川区の独自事業である「すくすく事業」の中に完全に吸収されることになります。就労支援として不十分な内容の学童クラブ事業が、「江戸川区流の就労支援」として、法的な後ろ盾を持って、将来に引き継がれいくことになるのです。

ですから、私たち保護者は、学童クラブ事業につき、区がなすべき義務を、児童福祉法にそって整備するよう、みなさまから寄せられた署名を提出し、区議会と区長に求めてきました。しかし残念なことに、「すくすく事業条例」は賛成多数で可決、成立しました。


◆新「すくすく事業条例」下での、学童クラブ事業の行く末は?

以下が、「すくすく事業条例」として可決した、第74号議案です。
(詳しくは こちら からダウンロードしてお読みいただけます)






江戸川区ではこの条例を根拠に、今後、いかなる就労支援が行われるのでしょうか?

この条例において、学童クラブ事業の定義は、ただひとつ、「保護者の就労等の理由により、家庭において適切な保護を受けることができない児童に対する事業」と書かれているのみです。

これでは、行政が、学童クラブ事業の内容を「どんな」事業に定めることもできてしまいます。

事実、この条例原案のままで、10月27日に至るまで、区の執行部は「就労支援ではない」事業と解釈していました。このままでは、今後の行く先は明白…つまり「いま現在以上に、就労支援が充実するとは考えにくい。さらに低下する可能性は大きい」す。

私たち保護者は、「学童クラブ事業が就労支援であるのか、ないのか」に関する今回の公開質問状について、区の回答、その変更について、逐一、区議会開催前に、全議員にメールで主旨の説明等を行い、情報を伝える努力を行って参りました。

10月28日の区議会では、3名の議員の方が、この第74号議案は、原案のままでは不十分であり、継続審議または、反対であるという反対討論をそれぞれのお立場で行われましたが、しかし、大変残念なことですが、江戸川区議会は原案のまま賛成多数でこれを可決しています。

現在行っている学童クラブの運営内容が、児童福祉の観点から、就労支援として適切であるのか?、またそれを新条例で引き継ぐことが妥当なのか?という、肝心の部分についての議会での議論を私たちは希望していましたが、ほとんどの区議会議員の皆さんは、そういった議論は不必要であり、原案で可決としたわけです。


◆すくすくスクールの「質」は、学校ごとにバラバラになる?

さて、今回の区議会では、今後のすくすくスクール実施要綱について、「学校ごとのすくすくスクールの特徴を生かしつつ必要最小限の事項を定めた要綱を制定していきたい」と、総務委員会で区が答弁したことも発表されました。

ということは、各学校(およびすくすくスクール)の「実情」によって、学童クラブの運営内容が異なることがありうるということでしょう。

●帰りの時間管理をきっちりしてもらえる学校があれば、帰る時間の管理は各家庭の自己責任になる学校もある。

●静養の場所を設けられる学校もあれば、そうでない学校もある

●指導員配置、資格要件が充分でない学校もある

●人口過密で、学童の子どもの生活の場所として不適切な環境の学校もあれば、学童保育として許容範囲の学校もある

●施設に置かれた遊具や図書などの環境が、年齢や発達に応じた配慮のなされている学校もあれば、そうでないものもある

●サポートセンターのイベントでおやつが比較的頻繁に食べられる子もいれば、そうでない学校では学童クラブの子どもたちはずっと空腹のままである

●休校日に開所している学童クラブもあれば、そうでない学童クラブもある

現状でも、区内各校のすくすくスクールの状況は、ばらつきがあります。
今後はますます、その「差」が拡大しうる、ということです。

そしてたとえ現状は良くても、人の異動(すくすくスクールスタッフや学校責任者の異動)により、対応が変わる可能性もある、年度によって質が上下する可能性がある、ということでしょう。

すくすくスクールの内容が不満で、行きたくなければ行かない、別の場所で遊べば良いという選択肢のある、「すくすく(一般)登録」の子どもなら、それはそれでよいのかもしれません。

しかし学童クラブ登録の子は、毎日そこへ行かなければいけないのです。地域の自主性や指導員の力量次第、学校の施設状況次第で、事業内容が上下していいような事業ではないのです。

だからこそいま、国は児童福祉法を改正し、地方自治体に対して「学童クラブが達すべき水準を示し、国を挙げてこれを達成しよう」としているというのに、江戸川区はそれから離脱しました。

それならそれで、国が示した水準を上回る学童保育が達成されるよう、条例の内容を吟味し、江戸川区行政が達しなければならない水準を示す条例を作ることを、私たちは、求めてきました。

しかし、可決された条例の内容は、上記にご紹介した通りです。

このままでは、新しい「すくすく事業条例」のもとでの学童クラブ登録の運営内容が、現場まかせの、国の基準を下回るものになることが充分予想されます。就労家庭は現在と同様かそれ以上の苦境に立たされることになるでしょう。

多田区長は、このことを、「区民に周知はするが、説明はしない」と、区議会で発言しました。

大切な学童保育に関する条例、児童福祉法を外れるという大きな判断が、たった30余日の議論で終わってしまったことは、江戸川区民としては、残念としか言いようがありません。

しかし、署名、コメントなどで、多くの皆様が江戸川区に対し声を上げてくださったことが、”学童クラブは就労支援をその趣旨に含む”と回答した江戸川区の判断に大きく影響したことは間違いないと考えます。

ご協力いただきました皆様には、心から御礼申し上げます。

また11/30(日)は、皆様のご参加をお待ちしております。
詳しくは下記をご覧ください。

◆【参加者募集!】11/30(日)「すくすくスクール学童クラブ事業に関する意見・情報交換会」開催!



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